モノづくりエンジニアなら、電験(電気主任技術者試験)はご存知の方が多いでしょう。
転職市場でも電気系エンジニアには非常に評価の高い資格です。
私も学生時代に友人にいっしょに受験しないかと誘われた経験があります。(管理人は工学部電気工学科の出身です)
電験には電験3種から電験1種まで三区分あります。
電験3種の試験に合格すると、国内の事業用電気工作物の約9割を保守保全することが可能になります。
これが電験3種の人気が高い理由です。
転職市場においても非常に需要が高く、取り合えず資格さえあれば採用します、と言う求人まで出ています。(信じられないかも知れませんが、本当にそんな求人が出ています)
この記事では、電気主任技術者の評価が高い理由を更に詳しく解説し、また受験方法から難易度まで解説します。
あなたがこの先、電気系のエンジニアとして転職を考えるなら、取得しておいて絶対損のない資格です。
なお、この資格を活かした転職先については別記事が用意してあります。ぜひそちらもご覧ください。
➡第三種電気主任技術者(電験3種)が活かせる7つの転職先とは?
電験3種が人気の高い資格である理由
■電気事業法による必置資格である
まず、電験3種(第三種電気主任技術者試験)に合格していることが、いかに転職活動に有利なことか説明したいと思います。
電気主任技術者は国家資格であり、必置資格の一種です。その根拠となっているのは電気事業法です。
電気事業法43条1項では、
事業用電気工作物を設置する者は、事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督をさせるため、通商産業省令で定めるところにより、主任技術者免状の交付を受けている者のうちから、主任技術者を選任しなければならない。
引用元: 電気事業法
と定められています。
事業用電気工作物とは、発電所や大容量の電力を消費する工場やビルなどに設置されている発変電・送配電設備を指します。
中でも電気事業以外の工場やビル、施設などの設備は自家用電気工作物と呼ばれて区別されています。
ともかく、私達の身の回りには自家用電気工作物を含めて至る所に事業用電気工作物が存在します。
簡単に言えば600Vを超えて受電する工場、ビル、施設などが全て対象となります。
この事業用電気工作物が安全かつ適正に運転、稼働されるよう設備管理したり保全・保安活動を行うのが電気主任技術者です。
電力の安定供給が出来るように、また火災や漏電などの事故が起きないように点検やトラブル対応を行います。
事業主は先に紹介した電気事業法43条によって必ず電気主任技術者を選任しなくてはならない法的義務を負っています。
そして、電気主任技術者は電験合格者から選任しなくてはならないとも定められています。
これが電験合格者の需要が高い一番の理由です。
事業用電気工作物の電力容量によって電験3種、電験2種、電験1種と必要な資格が異なります。
ただ、冒頭でも述べたように国内の事業用電気工作物の約9割は電験3種の資格で間に合います。
それゆえ、電験3種は企業にとって需要の高い資格であり、転職を希望するエンジニアには人気の資格となっているのです。
あなたがこれから先も電気系のエンジニアとして設備保全や生産技術、プラントエンジニアなどの仕事を続けていこうと思うなら、電気主任技術者は絶対に取得しておいて損のない資格です。
■合格率が低く、簡単には資格が取得出来ない
電気主任技術者試験がどのくらい難しいか、データを紹介しましょう。
昭和60年から令和1年までの35年間に電気主任技術者試験(電験)を受検した人は合計で1,421,498人います。(一種・二種・三種合計)
そして合格者は146,380人であり、合格率は10.3%となっています。
どうです?
いかに電気主任技術者試験に合格するのが難しいか、お分かり頂けましたか。これでは転職市場で電気主任技術者が不足するのも納得出来ますよね。
試験では発変電、送配電設備の保全、メンテナンスに必要な専門知識が広範囲に出題されます。詳しくは後半の記事をお読み頂くとして、計画的にしっかり勉強しないと合格は無理です。
電気主任技術者の需要は高いのに、電験合格者はそうそういない、これが転職市場において資格保有者を有利にしています。
余談ですが、私は大学時代に同級生3人から電験3種の受検を誘われました。3種は受検資格を問われないので大学生でも受検可能です。
しかし、私には全く自信がなかったので誘いを辞退しました。そして同級生3人は見事に合格しました。彼らはクラスでもトップクラスの優秀な学生であり、並み以下の私には無理な話でした。
■この先も電気主任技術者は不足する
この先の見通しでも電気主任技術者は不足するとの予測がされています。
経済産業省が平成29年3月に発表した「電気保安人材の将来的な確保に向けた検討について」と言うデータがあります。同データでは電験2種、電験3種について人材不足を指摘しています。
電験2種は地方の再生可能エネルギー関連施設の保全人材が不足し、電験3種については保安法人での人材が不足するとの推測です。詳しくは先のリンク記事をお読み下さい。
電気主任技術者が事業用電気工作物に対する必置資格である以上、この先も転職市場で需要が高い状況は変わりません。
後ほど詳しく説明しますが、中高年でも有資格者には好条件での求人が出ている背景には、こうしたエンジニア不足があります。
■電気主任技術者に専任されなくても高い評価を受ける
電験3種に合格して、仮に電気主任技術者に専任されなくてもエンジニアとして高い評価を受けることが出来ます。
電験3種に合格していることが、電気設備、施設の保全エンジニアとしての知識、スキルが十分高いことの証明になるからです。
実際に電験3種の求人情報を見ると、電気主任技術者の選任目的以外の案件が多数あります。
例えば事業用電気工作物以外の設備保全や生産技術などの仕事でも電気主任技術者の募集求人は多数出ています。
■電気工事士などの資格との比較
電気主任技術者の求人によく出てくる電気関係の資格に、電気工事士と電気工事施工管理技士があります。
参考までに電気主任技術者との比較をまとめてみました。
分かり易く簡潔に言えば、
電気系3資格の比較
●電気主任技術者=電気設備の保守保全を行う為の資格。
●電気工事士=電気工事を行う為の資格。
●電気工事施工管理技士=工事現場の施工管理を行う為の資格。
と言うことになります。
大容量の電気を扱う工事や保守保全は、どこかにミスやトラブルがあると火災や大事故の原因になったり、安定的な電力供給がストップするリスクもあります。
そのリスクを未然に防ぐためにこうした資格制度が存在する訳です。いずれも法的根拠があるため、事業者にすれば資格保有者の確保、育成は必須となります。
これらの資格は転職市場で需要の高い資格なので、2つ以上取得していると採用にはかなり有利と言えます。
電気主任技術者の検定概要
【資格名】
●電気主任技術者
【どんな資格か】
●電気に関する知識と技術を証明する国家資格であり、必置資格です。
●発電所や変電所、工場やビルの受電設備や配線など、電気設備工事、保守、運用に関する保安監督が主な仕事になります。
●電気設備を設けている事業主は保安の監督者として、電気主任技術者を選任しなければならないことが法令で義務づけられているため、需要の高い資格です。
●電気主任技術者には第一種、第二種、第三種があります。
●第一種電気主任技術者
実務年数、学歴などの条件はありません。誰でも受験可能です。
電験1種に合格すると、すべての事業用電気工作物の主任技術者として認定されます。
●第二種電気主任技術者
実務年数、学歴などの条件はありません。誰でも受験可能です。
電験2種に合格すると、電圧17万ボルト未満の事業用電気工作物の主任技術者として認定されます。
●第三種電気主任技術者
実務年数、学歴などの条件はありません。誰でも受験可能です。
電験3種に合格すると、電圧5万ボルト未満の事業用電気工作物の主任技術者として認定されます。
以上のように、電気主任技術者検定においては受験資格に実務年数や学歴は問われません。誰でも受験可能です。
しかし、難易度は後ほど詳しく説明しますが非常に高く電験3種でも合格率は10%前後くらいです。かなり事前準備をしないと合格出来ません。
ただし、受験科目は複数あって、合格した科目は次の試験では免除されます。
あるいは、第二種、第一種の検定では一次試験に合格して二次で不合格になった場合、翌年は一次試験が免除されます。
こうした受験資格、免除措置についてはこちらで詳細をご確認下さい。
『電気技術者試験センター』
電験2種、電験1種が必要なのは、発電所、変電所、大規模工場、大規模施設です。
多くの工場設備の保全業務には電験3種で事足ります。
あなたがこれから電気主任技術者の資格を取得するならまずは電験3種からの受験をお奨めします。
【受験方法】
●願書受付 5月下旬~6月中旬。
●試験実施日
*電験3種は令和4年度から年2回の受験が可能になります。
●受験料と試験科目
【試験問題】
電験1種・2種は一次試験、二次試験、電験3種は一次試験があります。
●一次試験
・理論
電気理論、電子理論、電気計測及び電子計測に関するもの。
・電力
発電所及び変電所の設計及び運転、送電線路及び配電線路(屋内配線を含む。)の設計及び運用並びに電気材料に関するもの。
・機械
電気機器、パワーエレクトロニクス、電動機応用、照明、電熱、電気化学、電気加工、自動制御、メカトロニクス並びに電力システムに関する情報伝送及び処理に関するもの。
・法規
電気法規(保安に関するものに限る。)及び電気施設管理に関するもの。
全てマークシート方式です。
●二次試験
・電力/管理
発電所及び変電所の設計及び運転、送電線路及び配電線路(屋内配線を含む。)の設計及び運用並びに電気施設管理に関するもの。
・機械/制御
電気機器、パワーエレクトロニクス、自動制御及びメカトロニクスに関するもの。
全て記述式です。
最新の問題と解答を電気技術者試験センターのホームページで見ることが出来ます。
『試験の問題と解答』
電験3種の合格ラインの目安としては4科目とも60%の得点となっています。
【合格率】
電験1種、2種、3種の合格率は以下の通りです。
*電験1種、電験2種については令和2年度、電験3種は令和3年度の実績です。
元データ➡『試験実施状況の推移』
この合格率を見ると在学中に電験3種に合格した同級生はやはり大したもんだと感心します。
【設備保全の転職に有利か】
●事業用電気工作物を設置する工場やビルなどでは必置の資格であり、転職には大変役立つ資格です。
●電気主任技術者として選任されなくても、電気系エンジニアの能力証明として認知されており、設備保全や生産技術などの仕事でも高く評価されます。
まとめ
●電気主任技術者は、発電所や大容量の電力を消費する工場やビルなどの事業用電気工作物には必ず必要となる資格です。
●電気事業法に基づく国家資格、必置資格です。
●電験3種に合格すると日本の約9割近い事業用電気工作物の保守保全が可能になります。ここが人気の最大の理由です。
●合格率は電験3種でも10%前後で非常に難関です。資格保有者の需要が高い理由はこの難易度です。
●生産技術、設備保全などの電気系エンジニアの転職には非常に強い、役に立つ資格です。
電気主任技術者の資格を活かした転職先についてはこちらの記事をお読みください。
第三種電気主任技術者(電験3種)が活かせる7つの転職先とは?
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