モノづくりエンジニアの転職ノウハウを解説します。
私が半導体工場で、20年間に渡ってエンジニアを採用してきた経験を元に書いています。
具体的には、面接、志望動機、転職エージェント、専門資格、未経験者の5項目について、詳しく解説しています。
こうした情報はすでにネット上には溢れているし、書籍もたくさん出ています。
そうした情報と少し違うのは、あくまで私が現場で体験したことをベースに書いている点です。
採用する側がどんな思惑で面接を行い、志望動機を読んでいるか、生の声をお聞きください。
モノづくりエンジニア 5つの転職ノウハウ
①面接で大事なポイントをおさえる
②志望動機に書くべきこと
③転職エージェントの活用法
④専門資格の活かし方
⑤未経験者でも採用される方法
モノづくりエンジニアの面接 ここがポイント
私がエンジニア採用をしていた当時、面接はもっとも重要視していました。
エンジニアとしての適性や資質を面接で確認していたのです。
技術面で言えば、即戦力として期待できるか。
人間性で言えば、社風や職場の雰囲気になじめるか、盛り上げてくれるか。
せっかく採用してもすぐに辞めたりしないか。
確かめたいのはこんなことです。
あなたにとって面接は、転職活動の中でも最大の難関であり、同時に最大のチャンスでもあります。
そもそも面接までたどり着けず、書類選考で落とされることも多い訳ですから、チャンスと前向きに考えてください。
機械設計の面接
設計と言う仕事は途中経過が見える化しにくい仕事です。
任せたら、後は担当者を信用するしかない世界です。
あなたが信用するに値する人材かどうかを問われます。
【機械設計の面接でよくある質問】
■なぜ、設計を仕事に選んだのか理由を教えてください。
■今までどんなものを設計してきましたか?
■得意とする設計はどんなジャンルですか?
■設計で使いこなせるCADはどんな機種ですか?
■設計納期を守るためにやっていることがありますか?
■自分の設計品質をどんな方法でチェックしていますか?
【面接のポイント】
設計は上流工程なので、設計が終わらないと下流工程が大渋滞します。
責任者にとって設計の納期管理、進捗管理は最大の関心事です。
極端に言うと、納期遅れの100点より、納期厳守の70点が欲しいのです。
あなたの納期対策を安心材料にできるよう、アピールしてください。
*参考記事
➡機械設計の納期を間に合わせる「完成度60%の原則」
また、あなたを即戦力として計算するのに、構想設計から可能なのか、機構設計から可能なのか、そこも知りたい点です。
これはあなたの実績を話すだけでなく、この先の希望も交えて話してください。
あなたのやる気、積極性を強く印象付けることが大事です。
こちらの記事も参考にしてください。
➡機械設計に向いている人
生産技術の面接
生産技術は非常に業務範囲が広く、生産に関する課題、問題の何でも屋的な存在です。
あなたがどの範囲の仕事をカバー出来るのか、また未知なる分野への適応力、対応力がどれだけあるかを問われます。
設計・開発工程と生産工程の間をつなぐ役割もあるため、コミュニケーション能力に問題ないかもチェックされます。
【生産技術の面接でよくある質問】
■生産技術のどこにやりがいを感じますか?
■生産技術の仕事をする上で、あなたが一番重要だと思うことは何ですか?
■新規の生産ラインやプロセス立上げでは、どんな役割を担当してきましたか?
■生産性や品質の向上で成果をあげた例を教えてください。
■設計業務のスキル・経験はありますか?
■緊急時には残業や休日出勤が発生することがありますが、対応可能ですか?
【面接のポイント】
モノづくりへの興味と関心が強く、常に新しい技術を取り込む努力を惜しまない。
自分で課題を見つけてそれを解決する、しかも周囲を巻き込む説得力もある。
そんな仕事ぶり、仕事に対する姿勢が面接者に伝わるエピソードを用意してください。
抽象的な回答より、具体的なエピソードの方が断然印象に残ります。
こちらの記事も参考にしてください。
➡生産技術の仕事に向いている人・向いていない人
設備保全の面接
マニュアル通りの定期点検や事後保全しか出来ない能力なのか、それとも予防保全、改良保全まで可能な人材かを問われます。
また装置トラブルで生産が停止した時、最優先で生産復帰させる必要があり、そこに責任感を持って仕事をしてくれるかどうかも重要な面接ポイントです。
【設備保全の面接でよくある質問】
■今までどんな工程、設備の保全をやってきましたか?
■設備の改善や改造の経験があれば具体例を話してください。
■メンテナンスの治工具を作成した経験がありますか?
■設備保全業務のやりがいはどこに感じますか?
■設備保全の仕事はどこが難しいと感じますか?
■保全のスキルアップの為に実践していることがあれば話してください。
■急な残業や夜間の呼び出しに対応可能ですか?
【面接のポイント】
設備保全の使命として、生産設備の安定稼働を最優先に仕事をしている、と伝えてください。
緊急時には残業や休出もいとわず対応したエピソードなども有効です。
むろん、そうした緊急時が発生しないようにすることが仕事なのですが、いざという時頼りになるかどうか、現場責任者は必ずそこを見ます。
設備保全の面接の受け方を詳しく解説しています。
➡設備保全の面接で一番大事なこと
➡設備保全・メンテナンスの仕事に向いている人
品質管理の面接
品質管理は社内だけでなく、外部の顧客や仕入れ先業者とも信頼関係を築く仕事です。
従って、品質管理のスキルも大事ですが人間性も非常に重要です。
メンタルが強いか、理論的な思考が出来るか、コミュニケーション能力に秀でているか、そうしたことがチェックされます。
【品質管理の面接でよくある質問】
■あなたにとって、品質管理とはどんな仕事ですか?
■品質管理の仕事にどんなやりがいを感じますか?
■品質管理の仕事で、嬉しかったこと、辛かったことがあれば聞かせてください。
■最近発生したカスタマークレームがあればどう対処したか話してください。
■品質の安定化や向上の為に日常的に取り組んでいることがあれば教えてください。
■スキルアップの為に取り組んでいることがあれば話してください。
■外部監査の対応では、どんな役割をしてきましたか?
【面接のポイント】
実務経験が3年くらいまでなら品質管理のスキルを中心にアピールするのがいいでしょう。
それ以上のキャリアがあるなら、スキルより課題や問題に対する適応能力をアピールしてください。
やはり一番インパクトがあるのはカスタマークレームの対応や、重要な外部監査の対応です。
つまり、企業として大事な信用や信頼をいかに守ってきたか、発展させてきたか、そこを具体例で話してください。
品質管理の面接の受け方を詳しく解説しています。
➡品質管理の面接で聞かれること、大事なこと
➡品質管理の仕事に向いている人・不向きな人
志望動機に書くべきこと
モノづくりエンジニアの志望動機では、絶対に外せない超鉄板項目が3つあります。
①なぜ、今の仕事を選んだか。(業界・職種)
・
②なぜ、この会社に応募したのか。
・
③転職したら、どんなメリットで貢献できるのか。
この3つです。
志望動機でよく使われるフレーズが、
「あなたと企業の接点を語る」
ですね。
鉄板項目の2番目です。
むろん、それは大事なのですが、その前に1番目を熱く語ってください。
なぜなら、2番も3番も、1番が原点になってるはずだからです。
今の仕事への熱い想いがあり、実現したい夢があり、そのために企業を選んだはずです。
でも、もしかしたらあなたにそんな熱い想い、強い想いはなく、何となくやり始めて現在に至る、かも知れませんね。
でも、志望動機に「何となく」なんて書いたら採用されません。
キャリアが何年にしろ、今後も今の仕事をやりたいと思っているのなら、何か理由があるはずです。
なぜ、今の仕事が続けられているのか。
仕事を面白い、やってて良かったと思ったことは何か。
自分に今の仕事が向いている、合っていると思える理由はないか。
あなたの家族や友人、同僚などに、自分が今の仕事に向いていると思うか、聞いてみるのもヒントになるはずです。
志望動機を書くときは抽象的な理由は避けてください。
「興味があるからです。」
ではなく、
「モノづくりはコツコツ積み上げて行く過程が見えて、自分が頑張った結果が分かるので遣り甲斐があります。」
といった感じです。
あなたの体験、エピソードを語ればオリジナルの志望動機が出来上がります。
こちらの記事も参考にしてください。設備保全を例に説明していますが、他の職種にも応用できます。
➡設備保全・メンテナンスの志望動機は3つのステップで書く
転職エージェントの活用法
転職エージェントの活用法について、選び方と利用するコツを解説します。
転職エージェントの選び方
結論から書くと、
「希望職種の求人件数が多い転職エージェントを選ぶ」
これが最も重要です。
いや、他にも重要なことがあるんじゃないか?
あなたはそう思うかも知れませんね。
サポートの品質は?
キャリアアドバイザーの人数、能力、レベルは?
過去の実績は?
初めてでも安心して利用できる?
などなど。
でも、求人件数が多いと言うことは、かなりの確率でその他の条件も満たします。
なぜなら、転職エージェントにとって求人件数が多いジャンルは主力商品だからです。
主力商品には優秀なキャリアアドバイザーを配置するし、サービスにも力を入れます。
また、求人件数が多いと言うことは、それだけ転職サポートに実績があるということです。
求人件数が多ければ他の条件も満たしていると考えられますが、その逆はありません。
どんなにサポート力があっても、サービス満点でも求人件数が少ない転職エージェントは利用価値がありません。
なぜなら転職先の選択肢が狭いからです。
それはどんなに優秀なキャリアアドバイザーでもカバーできません。
あなたが転職エージェントを選ぶとき、真っ先に優先すべき条件は求人件数の多さです。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
➡転職エージェントの活用方法と注意点
複数利用が基本
転職エージェント活用法の結論を言えば、
「転職エージェントは複数利用が基本」
これです。
その理由は色々ありますが、一番の理由は抱えている求人が異なるからです。
非公開案件も含めて、それぞれ独自の求人を抱えています。
転職エージェント1社だと、そこ以外の有力情報、好条件を逃してしまいます。
それはあまりにもったいないです。
むろん、だからと言って手当たり次第転職エージェントに登録するのは無謀です。
多くの転職成功者が体験記に書いているように、まずは2社、3社に登録するのがおすすめです。
複数登録しておけば、キャリアアドバイザーとの相性問題や、スキル不足問題のリスク対策となります。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
➡転職エージェントの活用方法と注意点
専門資格の活かし方
モノづくりエンジニアの求人で、応募条件に専門資格を指定するケースは全体の2割程度しかありません。
残り8割の求人は資格がなくても応募できるし、採用される可能性があります。
つまり、ほとんどの求人はただ資格を持っているだけでは転職に各段有利とは言えません。
では、どうやってあなたの資格を転職に活かせばいいでしょうか。
モノづくりエンジニアの求人で、専門資格を活かす方法は次の2通りあります。
●資格そのものに需要がある求人を探す
●資格よりキャリア重視の求人に、キャリアの裏付けとして活かす
あなたが保有する資格の種類と、今後のキャリアプランに合わせて資格を活かしてください。
資格そのものに需要がある求人を探す
あなたの持っている資格が、業務独占資格や必置資格なら、その資格をキーワードに求人を探してください。
何しろ、その資格保有者がいないと事業ができないので、資格そのものに需要があります。
例えば、電気主任技術者、電気工事士、ボイラー技士、エネルギー管理士などです。
キャリアアドバイザーに相談すれば、その資格を必要とする求人を紹介してくれます。
また、電気主任技術者は、電気エンジニアとしての能力を示す指標にもなります。
広く電気系エンジニア職の求人で需要が高い資格と言えます。
こちらの記事に詳しい解説があります。
➡モノづくりエンジニアの専門資格
キャリアの信頼性に資格を活かす
あなたの持っている資格が名称独占資格や、技能検定の場合、資格そのものに需要があまりありません。
資格を持っていなくても、知識やスキルがあれば業務が可能だからです。
例えば、機械保全技能士、半導体製品製造技能士、機械・プラント製図技能士などです。
こうした資格が対象の仕事では、資格保有、検定合格をアピールするのではなく、あくまでキャリアをアピールしてください。
そしてキャリアの信頼性を示す証として資格や検定合格を利用してください。
A:設備保全の仕事を5年やって、保全スキルを磨きました。
B:5年の間に機械保全技能士2級に合格し、保全スキルが上がりました。
同じ5年のキャリアでも、Aさん、Bさん、どちらのスキルアップにあなたは信頼性を感じますか?
国家検定に合格しているという客観的事実は、信頼性の裏付けになります。
単に資格を持っていると言うだけでなく、その資格を活かしたキャリア、実績、成果をエピソードにしてアピールしてください。
こちらの記事もぜひ参考にしてください。
➡モノづくりエンジニアの専門資格
未経験者からエンジニアをめざす方法
モノづくりエンジニアの求人で、実務経験がないのはかなり不利です。
どの求人もエンジニアとして3年から5年以上のキャリアを積んだ、即戦力の人材を求めています。
その結果、実務経験なしで応募できる求人はかなり少ないのが実状です。
では、あなたがエンジニア未経験から、モノづくりエンジニアを目指すにはどうすればいいでしょうか。
まずは何らかの仕事でモノづくりに関わり、経験者になることです。
そうすれば応募条件の「実務経験があること」をクリアできます。
こちらの記事も参考にしてください。
➡未経験者がモノづくりエンジニアをめざす方法
未経験者でも応募できる求人を探す
例えば設備保全だと、難易度の低い保全業務に未経験者歓迎案件があります。
全くの未経験者でも数週間の研修、トレーニングで現場に入れる保全業務があります。
実際に私が半導体工場で設備保全や生産技術の責任者だった時、未経験の派遣社員を教育して現場に投入していました。
こうした求人は半導体工場や自動車工場、家電工場などでかなりの件数見つかります。
ただし、多くは派遣社員募集であり、いきなり正社員にはなれません。
他にも生産現場で未経験者が採用される仕事は色々あります。
●量産工場のマシンオペレーター
・
●品質管理部門のライン検査員
・
●設計部門のトレーサー
・
●電子機器の組立て作業者
こうした仕事は未経験者でも採用される可能性があります。
そしてマシンオペレーターなら、始業点検や簡単な保全業務をやれるチャンスがあります。
組立て作業者なら、組立て用の治工具作成や作業の改善など、積極的に提案しましょう。
生産現場でスキルや知識を身に付けるチャンスを自ら見つけてください。
仕事ぶりが評価されれば難易度の高い仕事を任される可能性があるし、同じ派遣社員の中でグループリーダーになれる可能性もあります。
こうした経験を3年も積めば、「モノづくり経験者」として応募できる求人が格段に増えます。
未経験者歓迎案件は、次の転職サイトで探すことができます。
➡工場ワークスで未経験者歓迎案件を探す
➡マイナビジョブ20’sで未経験者歓迎案件を探す
エンジニアとしての資質、適性をアピールする
同じ未経験者でも、エンジニアとしての資質、適性がある人は採用される可能性が高くなります。
あなたにアピール出来る材料はないか、探してください。
●理工学部の出身者
・
●趣味やアルバイトで何かのモノづくりをした経験がある
・
●実務経験はないが、モノづくりに関する資格を目指している(取得済みならなお可)
・
●実務経験はないが、モノづくりに関する勉強をしている(資格以外で)
・
●日頃から新しい技術や製品に興味を持って見ている
こうした経験や経歴があれば、モノづくりエンジニアへの適性をアピールする材料に使えます。
あなたの志望動機の中にエピソードとして組み込んでください。
実務経験がなくても受験できる資格を狙う手もあります。
例えば、危険物取扱者、CAD利用技術者などがおすすめです。
こちらの記事からご覧ください。
➡モノづくりエンジニアの専門資格
まとめ
モノづくりエンジニアの転職ノウハウといっても、そう簡単には説明しきれません。
ここでは、面接、志望動機、転職エージェント、専門資格、未経験者の5項目について説明しました。
1ページに全ては書けないので、本文中に関連記事のリンクを貼りました。
ぜひ、詳しい記事をお読みください。
モノづくりエンジニアとして転職するなら、最大のアピールポイントはあなたのスキルであり、キャリアです。
あなたのスキルがどんなものか、じっくり考えてみてください。
今までやってきたことを、全部書き出してみるといいです。
あなたにとって当たり前の平凡な技術が、世の中ではすごい貴重な技術だったりします。
私自身、20年間半導体工場でやってきた技術が、思わぬきっかけで書籍になったり、外部セミナーの講師依頼が来たり。
非常にニッチな世界の技術だったため、専門家があまりいなかったのです。
あなたの技術も転職市場で、あなたが思う以上に需要が多い技術かも知れません。