公害防止管理者は特定工場の必置資格として需要が多い

公害防止管理者とは、特定の工場で大気汚染水質汚濁騒音振動等の公害を防止するため、必要な技術的事項を管理する技術者です。

この資格は『特定工場における公害防止組織の整備に関する法律』と言う法律によって生まれました。昭和46年のことです。

 

公害防止管理者は国家資格であり、条件を満たす特定工場については設置が義務付けられた、必置資格でもあります。

受験資格に制限がなく、誰でも受験できます。工場でエンジニアを目指す人なら取得しておいて損のない資格です。

 

では、公害防止管理者の資格はどうやれば取得出来るのか、またこの資格を持っていれば就職や転職に有利なのか、詳しく解説します。

 

公害防止管理者の概要

【資格名】

公害防止管理者

 

【どんな資格か】

●国家資格であり、対象となる特定工場においては必置資格となります。特定工場は業種と設置施設の種類によって指定されます。

●この資格は13種類の区分に分かれています。大気関係(1種~4種)、水質関係(1種~4種)、騒音・振動関係粉じん関係(特定・一般)、ダイオキシン類関係主任管理者の合計13区分です。

●受験者が多いのは大気関係第1種、水質関係第1種、水質関係第4種の3区分です。(受験者全体の約2/3)合格率は20%~30%です。

●公害防止管理者募集の求人はそれほど多くありません。大手転職エージェントで探しても80件~150件程度の求人数です。

●資格取得には公害防止管理者等国家試験を受けて合格する方法と、公害防止管理者等資格認定講習を受講して終了試験に合格する方法の2通りがあります。

 

【特定工場とは】

特定工場の指定は業種と設置施設の種類によります。

●業種

1.製造業(物品の加工業を含む)

2.電気供給業

3.ガス供給業

4.熱供給業

4番目の熱供給事業って、あまり聞きなれませんよね。これは事業者が登録制でエネルギー源としての冷水、温水、蒸気を利用者に導管で供給する事業です。

 

●設置設備

1.ばい煙発生施設

2.特定粉じん発生施設

3.一般粉じん発生施設

4.汚水等排出施設

5.騒音発生施設

6.振動発生施設

7.ダイオキシン類発生施設

上記7種類の施設について、『特定工場における公害防止組織の整備に関する法律』によって定められた規格、条件に当てはまる工場が特定工場となります。

詳しくは産業環境管理協会のサイトをご覧ください。

 

【受験資格】

●公害防止管理者等国家試験

年齢、学歴、実務経験など不問。誰でも受験可能です。

●公害防止管理者等資格認定講習

技術資格、または学歴及び実務経験資格が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。

 

【受験方法】

●公害防止管理者等国家試験

・受付開始 7月

・試験日 10月

・合格発表 12月

詳しい日程、試験地などの詳細は産業環境管理協会でご覧ください。

 

●公害防止管理者等資格認定講習

(一社)産業環境管理協会

(一社)日本舶用工業会

(一社)日本砕石協会

の3法人が認定法人として講習、認定を行っています。

費用は講習区分によってそれぞれ異なります。詳細は各認定法人ホームページでご覧下さい。

 

【受験・受講費用】

●公害防止管理者等国家試験

・¥8,700(大気1種・3種、水質1種・3種、ダイオキシン、公害防止主任管理者)

・¥8,200(大気2種・4種、水質2種・4種、騒音・振動、粉じん)

試験科目の範囲はこちらをご覧ください。

 

●公害防止管理者等資格認定講習

費用は講習区分によってそれぞれ異なります。詳細はこちらをご覧ください。

 

【合格率・難易度】

公害防止管理者には次の13区分があります。令和2年における受験人数と合格者、合格率を紹介します。

■令和2年度 区分別受験者数・合格者数・合格率

区分 受験者(人) 合格率
大気関係第1種 4,516  23.6 %
大気関係第2種 181 21.0 %
大気関係第3種 942 19.4 %
大気関係第4種 1,288 17.8 %
水質関係第1種 6,751 30.4 %
水質関係第2種 1,105 17.9 %
水質関係第3種 609 33.2 %
水質関係第4種 2,200 20.7 %
騒音・振動関係 1,178 27.2 %
特定粉じん関係 278 34.9 %
一般粉じん関係 244 28.7 %
ダイオキシン類関係 651 40.2 %
主任管理者 65 30.8 %
合計 20,008 26.0 %

 

上の表のように全体の合格率が26.0%とかなり難しいように見えます。

しかし、過去問をご覧頂くと分かりますが、特別難問と言えるような出題はありません。要するに覚える事が多いだけで、コツコツ勉強すれば合格出来ます。

過去問はこちら『国家試験の問題と正解』

 

なお、合格した科目については次回免除になる制度があります。

詳しくはこちらをご覧下さい。

『公害防止管理者等の資格に係る国家試験制度について』

 

公害防止管理者は設備保全の転職に有利か?

冒頭にも書いたように、公害防止管理者は国家資格であり、特定工場においては必置資格です。

かなり需要がありそうに思うのですが、転職市場ではそうでもありません。

私が調べた大手転職サイトの「公害防止管理者」求人件数を紹介しましょう。

 

■転職エージェント別 公害防止管理者求人件数

転職エージェント 求人件数
doda 143件
リクルートエージェント 76件
マイナビメーカーAGENT
パソナキャリア 42件

*2021年12月調査。件数は時期によって増減します。

*マイナビメーカーAGENTの求人件数は公式サイトにてご確認ください。

ご覧のように大手の転職エージェントサービスでも求人件数はこの程度です。

この資格のためだけにキャリア採用を考える企業は少ないのです。従って、公害防止管理者の資格を持ってるだけではそれほど転職に有利とは言えません。

 

次に公害防止管理者は具体的にどんな業務での求人が多いのか、転職エージェントの求人情報から紹介します。

■公害防止管理者の求人職種例

・環境保全・労働安全衛生・保安防災・品質関連・健康管理

・工場建設や施設管理、環境保全や安全衛生など

・生産技術改善、生産技術開発、プロセス開発、製造管理

・水処理施設における運転管理・保守管理業務

・ビル・病院・商業施設などの設備に関する保守・修繕 他

・自治体や民間企業の保有する水処理プラントの運転管理および保全業務

・大規模施設の保守・メンテナンス

・水道施設および管路の、施工監督補助業務

・バイオマスを原料とした水環境浄化材の開発および評価

・半導体工場におけるユーティリティー設備の技術担当

・水処理装置の納入及びメンテナンス業務

・公共インフラ工事に伴う騒音・振動に関する調査、解析、改善業務

・廃棄物処理工場の業務管理者

・バイオマス混焼石炭火力発電所の運転または保全業務に関する業務

・環境測定、データ解析、技術営業、ソリューション型の環境コンサルティング業務

・工場環境事務局及び施設管理

・原子力発電所の総合職

・プラントエンジニア(計装電気)

 

このように、特定工場のユーティリティ部門各種プラントの管理保全部署火力発電所・原子力発電所などから求人が出ています。

また、保守、保全、管理業務と言うより工事現場の騒音、振動対策の求人もあります。

こうした対策が不十分だと付近の住民からクレームが出る可能性があり、各企業とも防止に万全を尽くしています。

公害防止を指導するコンサルタント派遣企業からも求人がでています。

 

また、環境問題が大きく取り上げられる昨今、公害防止管理者の資格に対する認知度も高くなり、直接業務に関係なくても資格を取得する人が増えています。

 

公害防止管理者の年収はいかほどか?

大手転職エージェントサービスで「公害防止管理者」と言うキーワードで見つかる求人について、その年収を調べてみました。

年収が600万円を超える求人の割合は60%~70%となっており、かなり高額年収の求人もあります。

 

ただし、これらの高額年収の求人も、「300万円~700万円」のような幅が大きなケースがほとんどで、必ず600万円以上を保証するものではありません。

ざっくり予定平均年収では400万円~600万円辺りが目安となります。

 

やはり大手企業からの求人の方が予定年収は高く、中には1,000万円クラスもあります。逆に中小企業からの求人では300万円~400万円辺りの求人が多くなっています。

 

単に公害防止管理者の資格を持っている、と言うだけで年収が決まる訳ではなく、これまでのキャリア、実績が評価されます。

また他の資格を持っていて、それが求人企業のニーズに合えば当然評価は高くなります。

 

まとめ

公害防止管理者を募集する求人は少なく、資格だけで転職が有利になるとは言えません。

しかし、企業の規模を問わず、公害防止に無関心の企業などありません。

 

アピールのポイントは資格保有だけでなく、公害防止に対してどんなキャリアを積んできたか、実績を残してきたかです。

また、この資格の他にもエネルギー管理士電気主任技術者電気工事士などの資格も合わせて保有していればかなり転職に有利です。

工場のユーティリティ部門のプロとして採用される可能性は高くなります。

モノづくりエンジニアの専門資格

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