「モノづくりエンジニアの転職にどんな資格が有利ですか?」
こんな質問がネット上の相談サイトでよく見られます。これから転職を考えている人にとって、求人企業がどんな資格を求めているのか気になるところです。
そこで、大手転職エージェントを使って機械設計、生産技術、設備保全、品質管理の求人に、どんな専門資格が応募条件に指定されているか調べました。
この調査結果を見ればモノづくりエンジニアの転職市場において、どんな資格の需要が多いか分かります。
また、資格の分類について、必置資格、業務独占資格、名称独占資格、国家検定の解説をしています。
それぞれの資格の位置づけによって、転職市場でどう資格を活かせばいいのか、その方法も変わってきます。
私自身は半導体工場で20年間、モノづくりエンジニアの採用に関わってきました。
採用する側が専門資格をどう評価するのか、私の体験もまじえてお話します。
あなたの資格を転職で活かすにはどうすればいいか、そのヒントにしてください。
機械設計・生産技術・設備保全・品質管理の求人はこんな資格を求めている!
doda、リクルートエージェントの機械設計、生産技術、設備保全、品質管理の求人合計は約70,000件です。(2022年7月調査)
この4職種の範囲で、それぞれの資格名をキーワード検索、または資格検索し、求人数を調べました。
機械設計・生産技術・設備保全・品質管理の調査結果(表1)
*資格の種類:
■必置資格 ■業務独占資格
■名称独占資格 ■民間資格
■国家検定(技能検定)
*種類が重複しているものは片方のみ表示
資格名をクリックすると、その資格の詳しい解説記事を読めます。
*2022年7月調査結果。時期によって件数は変動します。
●求人件数の上位には必置資格、業務独占資格が多く出てきます。これらの資格は保有者がいないと業務ができないため、資格そのものに需要があります。
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●電気工事施工管理技士は、よく業務独占資格と間違われますが名称独占資格です。別の必置資格である、専任技術者や主任技術者、監理技術者の要件を満たす資格として受検者が多い。
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●資格名で検索すると求人件数が少なくても、実際の需要は多い資格があります。例えば、機械加工技能者、溶接技能者などは「経験者募集」の求人が多く、経験者になるには資格が必須です。
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●名称独占資格は資格そのものに需要は多くありませんが、「経験者」の応募条件を満たしている裏付けとして活かせます。
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●国家検定も名称独占資格と同様で、機械保全技能士、半導体製品製造技能士、電子機器組立て技能士などがその例です。
各資格の詳細については、表中の資格名をクリックして下さい。
専門資格には国家資格・国家検定・公的資格・民間資格の4種類がある
専門資格については国家資格・国家検定・公的資格・民間資格の4種類に分かれます。
国家資格・国家検定・公的資格・民間資格
【国家資格】
文部科学省のホームページによると、国家資格について以下のように定義されています。
国家資格とは、国の法律に基づいて、各種分野における個人の能力、知識が判定され、特定の職業に従事すると証明される資格。法律によって一定の社会的地位が保証されるので、社会からの信頼性は高い。
引用元: 国家資格の概要について
国家資格の中でも後ほど説明する設置義務資格や業務独占資格は、有資格者がいないと業務が行えません。
そのため求人条件でも非常に需要が高く、転職には有利な資格となっています。
【国家検定(技能検定)】
■国家検定とは、専門的な仕事をする上で必要な技能の習得レベルを評価する制度。技能検定とも呼ばれる。
試験に合格すると合格証書が交付され、「技能士」と名乗ることができます。現在130職種の検定があります。
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ただ、あくまで技能の習得レベルを特級から3級までの区分で評価する制度であり、この検定に合格しないと仕事ができない訳ではありません。この意味において国家資格の名称独占資格と同じです。
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機械保全技能士、半導体製品製造技能士、電子機器組立て技能士、機械・プラント製図技能士などがあります。
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モノづくりエンジニアにとって国家検定(技能検定)は非常になじみのある検定です。
【民間資格】
■民間資格は民間団体や協会が、それぞれの審査基準を設けて試験や認定を行う資格。
よく知られている民間資格としては英検やTOEIがあります。エンジニア系の民間資格では機械設計技術者、CAD利用技術者試験、自主保全士などがあります。
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民間資格の中には認知度が低いもの、社会的評価の低いものも多数あります。
【公的資格】
■国家資格と民間資格の中間的な資格が公的資格。国家資格ではないけれど、公的性質を持った資格。
認定するのは商工会議所、公益法人、地方自治体などです。また各省庁が後援する資格もあります。
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具体例としては、日商簿記検定試験、情報検定(J検)、食品衛生責任者、ケアマネジャーなどがあります。
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転職に役立つエンジニア系の公的資格は、CADトレース技能審査(平成29年で廃止)や配電制御システム検査技士など少数であまり見当たりません。
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中には民間資格との境があいまいな資格もあります。
設置義務資格(必置資格)・業務独占資格・名称独占資格
国家資格は次の3種類に分類されます。
【設置義務資格(必置資格)】
■必置資格は特定の事業を行う際に法律で設置が義務づけられている資格。
電気主任技術者・エネルギー管理士・危険物取扱者・公害防止管理者・高圧ガス保安主任者・消防設備士などがあります。
【業務独占資格】
■業務独占資格は有資格者以外が携わることを禁じられている業務を独占的に行うことができる資格。
電気工事士・玉掛作業者・ボイラー技士・自動車整備士・建築士・ガス溶接技能者などがあります。
【名称独占資格】
■名称独占資格は有資格者以外はその名称を名乗ることを認められていない資格。
電気工事施工管理技士、技術士(補)、保育士、栄養士、保健師などがあります。モノづくりエンジニアに関連した名称独占資格はごく一部です。
転職市場における資格の需要
同じ国家資格でも、必置資格、業務独占資格は転職市場で評価・需要が高い資格です。でも名称独占資格や技能検定はそれほど高い需要がありません。
それは資格の性質上当然と言えます。
必置資格や業務独占資格は資格保有者がいないと事業そのものが継続できません。
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新しい工場を建設する、製造ラインを増築するなどの場合、電気主任技術者や電気工事士は必須となります。
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言い換えると、資格そのものに価値、需要があります。
一方、名称独占資格や技能検定の場合は必ずしも資格保有者、検定合格者がいないと業務ができない訳ではありません。
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例えば新規設備を設計するのに機械設計技術者やCAD利用技術者がいなくても、それなりの設計能力を持ったエンジニアがいれば困ることはありません。
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つまり、資格や検定そのものには需要がなく、資格保有者に該当する能力に需要があります。
むろん、資格を保有していること、検定に合格していることが能力の証になる側面はあります。
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しかし、能力は経歴や実績で証明することも可能です。むしろ転職市場においては資格や検定の有無より経歴や実績の方が重要視されます。
こうした資格の需要の差を考慮した転職活動が重要になってきます。自分の持っている資格、検定を転職でどう活かすか、その戦略が必要です。
決して名称独占資格や技能検定が転職の役に立たない訳ではありません。活かし方ひとつで十分役に立ちます。
エンジニアの転職に役立つ資格・検定一覧
先ほど紹介した専門資格を、今度は職種別に分類してみます。
どの資格が、どの職種の転職に需要が多いか分かります。
*国家検定は「検定」と表記
【エンジニアの転職に役立つ資格一覧】
英会話のスキルが指定されることもあり
モノづくりエンジニアにとって、英会話の能力も資格同様、かなり重要です。
自動車や半導体業界はむろん、家電、機械、化学などの分野にも英語力を必要とする保全求人が多数出ています。海外で大型プラントの建設などを請け負う企業からも多いです。
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海外勤務が前提の求人では英語能力は必須条件として指定されています。
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また、海外から日本に進出している外資系企業の求人や、逆に日本から海外へ進出している企業のエンジニア求人にも英会話が必須条件になっているケースが多く見られます。
ではどの程度のレベルの英会話が必要でしょうか?
これは求人によってまちまちです。
●初級レベル
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●中級・上級レベル
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●英会話に抵抗のないレベル
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●ビジネスレベル
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●TOEIC600点以上
こうした応募条件が指定されています。
あなたがもしも、英語に自信はないけど英会話指定の求人案件に応募したいならどうしますか?
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まずは本業の技術職の技能をアピールし、入社後に英会話能力向上の意思があることを伝えてください。
英会話の能力は、それこそ初級レベルなら3ヶ月から6ヶ月ほど真剣に取り組めば身に着きます。あなたのヤル気次第で乗り越えられるハードルです。
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もっとも、ビジネスクラスの英会話を要求されると、これはそう簡単にはいきません。時間と実践が必要です。
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あなたの実力を伝えて、あとはやる気をアピールしてください。
まとめ
エンジニア職の転職に資格は重要ですが、いかなる資格も保有しているだけでは役に立ちません。
実際にその資格を活かした実務経験が豊富であってこそ、強力なアピール材料となります。
従って転職活動における資格の活かし方は実務経験とセットでアピールすることが重要となります。
また、どの企業がどんな資格者を必要としているのか、その情報も重要です。繰り返しになりますが、そのために転職エージェントの利用が効果的です。
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