未経験者が機械設計者を目指すなら、CADの資格は取得しておくべき?
CADの資格を持っていないと機械設計者の求人には応募できない?
あなたはどう思いますか?
機械設計のツールとしてCADは必要不可欠だから、資格を持っていれば就職にも転職にも有利に違いない。
こう思う人が多いでしょうね。
しかし、本当にそうでしょうか?
CADの資格が機械設計の転職に役に立つという具体的なデータ、証拠を見たことがありますか?
恐らくないはずです。
私は30年以上機械設計を仕事にしてきました。むろん、CADを使って設計していました。
そして機械製図の技能検定2級を受験した経験もあります。
そんな私の体験もまじえて、転職市場におけるCAD資格の需要をあなたにお伝えします。
この記事を読めばCAD資格を転職に活かす方法が分かります。
この方法を知らないとせっかくの資格もほとんど役に立ちません。
機械設計者を目指す上で、CADの資格をどう活かせばいいか、ぜひお読みください。
転職市場におけるCAD資格の需要
結論から言うと、転職市場におけるCADの資格需要はかなり少ないです。
CADを使う求人は多くの件数ありますが、応募条件にCADの資格を必須、または歓迎条件に指定する求人はほとんどありません。
資格指定の求人は、dodaやマイナビメーカーAGENT、リクルートエージェントなどの大手転職サイトで検索しても数件から数十件程度しか見つかりません。
CADオペレーターやCADトレーサーのような、CAD専業の求人でさえ資格指定は少ないのです。
CADを使う求人で重要視されるのは圧倒的に実務経験です。
要するに資格がなくてもCADを使いこなせれば問題ないし、逆に資格があっても実務経験が乏しい人は即戦力とは見なされず、採用されにくいのです。
これが機械設計者の求人となると、より顕著となります。
企業が応募者にCAD資格を求めるケースはほとんどありません。必要なのは設計の実務経験です。
当然、CADが使えることは条件に含まれますが、別にCAD資格は必要としていません。
資格保有者の方が優れた設計ができる訳ではないからです。
私自身、機械設計者として30年間仕事をしましたが、CADの資格は持っていませんでした。
でも設計をする上で資格がないことで困ったことは一度もありません。
職場の同僚や外部の優秀な設計者の中にもCADの資格無しで仕事をしていた人はたくさんいました。
むしろ、資格を持っている人の方が少なかったです。
また私は機械設計者として転職も経験しましたが、資格がないことで不利になったこともありません。
以上のように、CADに関する資格は転職市場では需要があまりありません。あくまで実務経験重視です。
CADの資格を転職に活かす方法とは?
CADの資格が全く転職の役に立たない訳ではありません。
求人はキャリア重視なので、あなたのキャリアのレベルの高さ、質の高さをアピールする材料としてCAD資格を使えば効果はあります。
CADオペレーターやCADトレーサーの求人なら、かなり有効です。
機械設計者の場合も、CADを設計ツールとして使いこなすスキルをアピールする中で、資格を持ちだせばより効果的です。
例えばCADの作図機能、シュミレーション機能、解析機能を使って設計の品質や効率を改善できた経験を、資格取得と絡めてアピールするといいです。
大事なことは設計のスキルを語ることであり、CADの資格をメインにしないことです。
とにかく、機械設計者の求人にCAD資格の需要は少ないことを覚えておいてください。
あくまでキャリア、実績重視です。単に資格を持っているだけでは有利とは言えません。
あなたの設計者としてのスキルの高さ、レベルの高さをアピールする材料の1つとしてCADの資格を使ってください。
これがCAD資格を転職に活かす方法です。
CADの資格を取っても機械設計者になれるとは限らない
機械設計者を目指す未経験者が、ネット上でよくする質問がこれです。
「まずはCADの勉強をして資格を取ろうと思うのですが、この方法が近道ですか?」
あるいは、CADオペレーターやCADトレーサーが、
「図面を描くだけではなく、設計者になりたいです。CADの資格を持っていますが、設計者への転職は可能でしょうか?」
といった質問もしています。
どちらの質問も答えは同じ、
「CADの資格を取っても(持っていても)機械設計者になれるとは限らない。」
これです。
CADを使うスキルが上達して、資格を取れたとしても、それだけで機械設計者になれる訳ではありません。
確かにCADは早く、正確に、効率よく図面を描くために必須のツールです。
そして単に図面を描くだけの機能ではなく、シュミレーション機能や解析機能によって設計品質は向上するし、精度も上がります。
3次元CADのモデリング機能により部品を平面から立体的にとらえることも可能です。
こうしたCADの機能を十分に使いこなすことは設計者に必要なスキルと言えます。
しかし、どんなにCADのスキルが上達しても、資格を取得するレベルに達したとしても、それで設計ができるようになるわけではありません。
CADを使いこなす能力と設計する能力は別ものだからです。
従って、CADオペレーターやCADトレーサーを何年やっても機械設計者にはなれません。
機械設計者になるには、機械設計に必要な知識とスキルを身に付け、実務を経験する必要があります。CADはそのためのツールの1つに過ぎません。
設計、開発と言う仕事はまだ世の中にない技術を生み出し、新商品を市場に送り出す仕事です。
いわば無から有を生み出す仕事であって、CADがアイディアを生んでくれる訳ではありません。
機械設計者を目指す人がCADの資格を目標にスキルを磨くことは意味のあることですが、それだけやっても設計者にはなれません。
未経験者が機械設計の仕事に就きたいなら、「機械設計者募集」の求人に応募するしかありません。
まずは設計者よりハードルの低いCADトレーサーから仕事を探そうとするのは正解とは言えません。
CADのスキルは設計の勉強をしながら覚えればいいのです。先ほども説明したように、CADを使いこなすスキルと設計のスキルは別ものです。
未経験者がモノづくりエンジニアを目指す方法は別記事があるので、そちらを読んでください。
参考:CADを使う求人でよく出てくる機種とは?
CADオペレーターやCADトレーサーの求人では、資格の指定はなくてもCADの機種指定は出てきます。
自社で運用している機種と同じCAD経験者を募集しています。
CAD操作をいちから教えるより、即戦力となる人材を採用したいからです。
モノづくり関連の求人でよく登場するCADは、
・
●AutoCAD(オートデスク)
・
●iCAD SX(富士通)
・
●Solid Works(ダッソー・システムズ)
などです。(他にもたくさんの機種が出てきます)
実際問題として、指定された機種以外でもCADを使った経験があれば短期間である程度は使えるようになります。
それ以上は仕事をこなしながら覚えて行けばいい話です。
気に入った求人のCAD指定の経験がないからと、応募をあきらめるのは早すぎます。
ぜひあなたのキャリアをアピールして応募のチャンスをつかんで下さい。
おすすめのCAD資格
あなたが機械設計者を目指すにしろ、CADオペレーターを目指すにしろ、CADの資格を目標にスキルを磨くことは意味のあることです。
そこでおすすめの資格を2つ紹介します。
「CAD利用技術者試験」と「機械・プラント製図(機械製図CAD作業)」の2つです。
CAD利用者技術試験は1990年からこれまで約59万人が受験し、22万人が合格しています。
CAD関連の資格試験では国内最大規模であり、認知度も高い資格です。
比較的難易度が低くて実務経験が浅い人でも合格出来ます。(それなりの経験と勉強は絶対必要)
一方、機械・プラント製図(機械製図CAD作業)は国家検定であり、合格すると「技能士」を名乗ることができます。
難易度も高く、1級は7年以上、2級は2年以上の実務経験を必要とします。
あなたの目標や現在の実力などを考慮して、どちらを受験すべきか決めてください。
どちらの資格が就職や転職に有利といったことはありません。
「CAD利用技術者試験」と「機械・プラント製図(機械製図CAD作業)」については別に詳しい記事があるので、ぜひそちらもご覧ください。
まとめ
「CADの資格を取得すると、機械設計者になれるのか?」
と言う疑問にお答えしました。
CADの資格を取得しただけでは設計者にはなれません。
CADのスキルと設計のスキルは別ものだからです。
しかし、CADは設計者にとっては必須のツールであり、十分に使いこなせるスキルもまた必須です。
従って、機械設計者を目指すあなたがCADの資格取得を目標にスキルを磨くことは、大いに意味のあることです。
CADのスキルを磨くことと同時に、機械設計の勉強もしてください。実務を積んで下さい。
そのキャリアのレベルの高さを裏付ける材料としてCAD資格を利用してください。
それがCAD資格を転職に活かす方法です。