私は30年間、機械設計の仕事に携わり、またエンジニアの採用や育成にも関わってきました。
そうした経験から、機械設計に向いている人、向いていない人が分かります。
むろん、例外的なエンジニアも中にはいるのですが、概ね傾向としてはハッキリしています。
一般に、ネットの転職サイトや就活本に出てくる機械設計に向いている人とはこんな人です。
●モノづくりに興味のある人
●長時間のデスクワークが苦にならない人
●理論的に物事を考えることが出来る人
●根気のある人
●新しいものに興味があり、学ぶことが好きな人
スキルの問題ではなく、向き不向き、適性としてはこんな点が必要とされています。
これらの指摘は確かに当たっています。その通りだと思います。
しかし、ここでは私の経験から少し違う角度で機械設計者の適性を語ってみたいと思います。
自分が機械設計に向いているかどうか、悩んでいる人はぜひ読んでください。
機械設計に向いている人、5つの適性
結論から言えば、この5つの適性を持つ人が機械設計に向いています。
①ポンチ絵の上手な人(センスのある人)
②コミュニケーション能力のある人
③フィードバック能力に優れた人
④考え続けることが苦にならない人
⑤失敗してもめげない人
では1つずつ解説します。
①ポンチ絵の上手な人(センスのある人)
これは完全に経験則です。
ポンチ絵と機械設計の直接的な関連性を説明するのは難しいです。
ただ、私の知る限り、優秀な機械設計者はほぼ100%ポンチ絵が上手でセンス抜群でした。
頭の中にある構想をささーっとポンチ絵に描いて説明してくれます。そのポンチ絵の分かりやすいこと。
そして描くスピードの速いこと。
彼らは別にポンチ絵を描く練習をしたわけではありません。なぜか、元々センスがあるのです。
私は高校時代、芸術の授業で美術を選択していました。半年くらい、石膏デッサンをやったのですが、そうした美術的な観点からのセンスではありません。
要は頭の中にある、イメージ、伝えたいことを図形にする、絵にして表現するセンスです。
②コミュニケーション能力のある人
コミュニケーション能力は機械設計者だけでなく、ほぼ全てのビジネスで要求される能力です。
なぜなら、自分以外の人と全く無関係に成立する仕事などないからです。
しかし、機械設計者にこの能力はつくづく重要だと思います。
設計のコンセプト、要求仕様を聞き取る、理解することから設計作業はスタートします。
そして節目で自分の頭の中に出来上がった構想、設計を上司や顧客にプレゼンすることになります。
こうした作業を正確に行うにはコミュニケーション能力が必要です。意思疎通を図ることが、自分が理解する、相手に理解してもらう基本です。
実際、エンジニア募集の求人に、「コミュニケーション能力」は必要な適性としてかなりの頻度で出てきます。
この能力は機械設計者の面接の時にもチェックされます。面接の短い時間であっても、直接向かい合って会話すると分かるものです。
別に上手に会話する必要はありません。ペラペラ流暢にしゃべる必要もありません。
正確に聞き取る、正確に伝える、これが機械設計者に求められるコミュニケーション能力です。
③フィードバック能力に優れた人
どんなに優れた設計者でも、最初から一流だったわけではありません。
何度も失敗を経験し、それを次の仕事に活かすことで一歩、一歩、上達していくのです。
ところが、いつまで経っても同じ失敗を繰り返す、ちっとも上達しない人もいます。
こういう人は自分の失敗、経験をフィードバックする能力に欠けているのです。
この能力は生まれつき備わった能力ではありません。どうすれば上達するか、同じ失敗をせずにすむか、真剣に考え行動することで磨かれる能力です。
ただ、一流の機械設計者はフィードバックをかけるにあたって、次の2つの適性を持っています。
●洞察力、観察力がするどい。
・
●手先が器用。(手先の感度がするどい)
この2つです。
この2つは多少、生まれつきの要素があるかも知れません。
洞察力、観察力はともかく、手先が器用ってフィードバック能力とどんな関係があるのか?
あなたはそう思うかも知れませんね。
ソフトエンジニアやハードエンジニアだとあまり関係ないでしょうが、機械設計者だと大ありです。
自分が設計した試作品を組立てる、デバッグする、そうした作業の中で手先から得られる情報は貴重なフィードバック情報です。
自分が書いた図面の公差、ハメ合い、面粗さが適正だったのか、過剰だったのか、不足だったのか。
そうしたことを自分で確かめるのに、手先の器用さ、感度の良さが必要になります。これが優れていると、より正確なフィードバックをかけることができます。
機械設計者にとって、自分の指先から入って来る情報は設計に必要なノウハウなのです。
本に書かれたノウハウもそれなりに大事ですが、実際のリアルな現物から得た情報の裏づけがより重要です。
④考え続けることが苦にならない人
毎日5時帰宅、残業も休出もなし。仕事は仕事、趣味や家庭生活とは完全に切り離して自分の時間を楽しむ。
働き方としてはそれでもいいのですが、頭の中で設計作業をストップさせてはいけません。ずっと考え続ける必要があります。
お風呂に入った時、布団に潜り込んだ時。ふとした瞬間にアイディアが浮かぶことはよくあります。
ただ、課題を潜在意識に刷り込むくらい考え続けていないと、使えるアイディアは浮かんできません。
そんな疲れること、したくない!
そう思う人は機械設計者には不向きです。
正解が出るまで、納得がいくまで考え続けること、これは設計者に必要な能力であり、苦にならない適性が必要です。
⑤失敗してもめげない人
何度失敗してもめげない、へこたれないメンタルの強さ、これは機械設計者に絶対必要な適性です。
どんな仕事でも、メンタルの強さは必要でしょうが、設計者には特に必要です。
なぜなら、新しいものを生み出す仕事であり、前例がない、お手本がない仕事だからです。
ある意味、失敗して当たり前、当然の仕事なのです。
だからこそ設計と言う仕事は付加価値が高い仕事であり、やりがいのある仕事なのです。
会社の中で、常に先頭に立って仕事をしている、そのプレッシャーと戦いつつ、失敗を次に活かせるメンタルの強さが必要です。
「あいつの設計した商品は売れない」
「ろくな設計をしない」
そんな辛い評価を受けつつも、めげずに次こそ必ずヒット商品を設計して見せる、そんな陽転思考ができるメンタルが必要です。
適性の無い人はあきらめるしかないのか?
今回は私の30年間の経験則から、機械設計者に必要な適性を述べました。
では、適性の無い人は機械設計者になることをあきらめるしかないのでしょうか?
いいえ、そんなことはありません。
生まれ持った才能、能力はどうしようもありませんが、努力でカバーできる部分もあります。
超一流にはなれないかも知れませんが、努力しだいで一流にはなれます。
ただ、並みの努力では追いつきません。
本文の中で、考え続けることが大事だと書きました。それはテーマが潜在意識に刷り込まれるくらい考え続けるレベルです。
ちょっとやそっとではそんなレベルに達しません。
私自身、とうてい機械設計者としての適性に恵まれていたとは言えません。
むしろ全然足りなかったと断言します。
だからこそ、人より努力し、勉強したのです。
それで何とか30年間、一流とは言えませんが機械設計者として仕事が出来ました。
新しい付加価値を生み出す、設計と言う仕事が好きだからやれたのです。
適性があっても努力しない人より、適性が不足していても努力する人の方が成功する可能性は高いです。
機械設計の仕事を転職エージェントサービスで探す