私は機械設計、生産技術、設備保全など、エンジニアの中途採用を20年間担当しました。
「機械設計がやりたいです。」
「設備保全がやりたいです。」
と言う人は随分応募してきましたが、
「生産技術がやりたいです。」
と希望を言った人はほとんどいませんでした。
生産技術志望の人が極端に少ない理由、それはなぜだと思いますか?
それはたぶん、生産技術の業務範囲が広すぎて、職種全体をイメージしにくいからです。
そんな業務範囲の広い生産技術、どんな人が向いてて、どんな人が向いてないのでしょう。
実際に私が生産技術要員としてエンジニアを採用した体験もまじえてお話します。
生産技術の志望者はなぜ少ない?
当サイトで紹介している、大手の転職エージェント7社の求人を調べてみると、機械設計、生産技術、設備保全の合計件数はこうなっています。
●機械設計 18,728件
・
●生産技術 18,373件
・
●設備保全 19,459件
このように、ほぼ拮抗した求人件数となっています。(2021年11月現在)
冒頭に生産技術の応募者が少ないと書いたのですが、転職市場において生産技術の需要が少ない訳ではありません。
ただ、機械設計や設備保全に比べて、生産技術は
「どんな仕事?」
という感じで、仕事内容がイメージしにくいのかも知れません。
一般に、生産技術の仕事は量産のための生産ライン立上げから、既存ラインの品質、歩留まり、稼働率などの改善を行います。
対象範囲も設備、プロセス、環境、材料、作業者と多岐、広範囲に及びます。品質管理や生産管理とも深く関わり合う仕事です。
私の感覚から言えば、生産技術って「何でも屋」さんです。生産ラインが稼働するのに必要なことは何でもやります。
逆に言えば具体的に何をやるかイメージしにくく、それで
「生産技術がやりたいです」
と希望する人が少ないのです。
実際には生産技術部門で設計をやったり、設備保全をやったりする例は普通にあります。
私が勤務した事務メーカーでも、半導体工場でもそうでした。
自社の生産ラインで使用する設備は生産技術部門で設計していましたし、新規の設備導入に際しては保全体制の構築も業務範囲でした。
結局、設計や設備保全も含めて、生産に必要な技術対応は何でも引き受けるのが生産技術の仕事です。
生産技術の仕事に向いている人、向いていない人
生産技術の仕事に向ている人は、1つの事を深く掘り下げるより、広範囲に知識やスキルを活かすことが好きな人です。
その為の勉強をいとわず、常に新しい技術、情報に興味を持つ人です。
また工場内の色々な課題、問題に首を突っ込んで、複数の部門にまたがるプロジェクトで活躍したい人です。
生産技術は開発、設計部門と製造部門をつなぐ役割があり、コミュニケーション能力や、調整能力といったものが要求されます。
そして場合によっては品質管理や生産管理部門ともコミュニケーションが必要になります。
時には複数部門の板挟みになることもあり、なかなかきつい仕事でもあります。
でも、こうしたコミュニケーションを苦にせず、積極的に入っていく性格の人が向いています。
コミュニケーション能力が必要
そして生産技術は仕事の方向付けや成果検証にデータ検証が欠かせません。
数字に強く、物事を理論的に考察する能力が必要です。数値データを収集すること、そこから課題や解決策を見出す能力が必要です。
そのため、現場作業とデスクワークの両方が必要になります。どちらか一方だけでは生産技術は務まりません。
腰の重い人、フットワークの重い人には不向きな仕事です。
とにかく、生産技術と言う仕事は常に忙しく、暇になることがありません。常時複数のテーマを抱えているのが当たり前の仕事です。
あまり仕事を広げ過ぎるとキリがなく、自滅しかねません。
仕事の優先順位を正しく見極め、自らの業務プランを立てる能力も重要です。
基本、暇になるより忙しい状態を好む人に向いた仕事だと言えます。
生産技術の仕事に必要なスキル・能力
今までは生産技術の仕事に向いている人、適性を説明しました。
ここからは生産技術の仕事に必要なスキル・能力を説明したいと思います。
ただ生産技術に必要な適性と能力は一体のものです。
例えばコミュニケーション能力は必要ですが、そもそも人とコミュニケーションをとることが嫌いな人にこの能力は期待できません。
理論的に物事を考える能力も必要ですが、考えるより行動が先、と言う人には難しいです。
必要なスキルは後から身に着けることが出来ますが、必要な能力は向き、不向きの問題があって、限界があります。
生産技術に必要な能力・スキル
●コミュニケーション能力
●複数のテーマを同時にこなす能力
●物事を理論的に考察する能力
●データを収集し、データから課題と解決策を見出す能力
●問題をひとつの方向だけでなく、色んな角度から考察する能力
●新しい情報や知識を取り込み、自分のものにする能力
●機械保全技能士の資格、または相応の知識とスキル
●機械設計のスキル
●CADで機械製図ができるスキル
●PLC(Programmable Logic Controller、プログラマブルロジックコントローラ)が扱えるスキル
ざっとこんな感じですが、これを全部満たすようなスーパーエンジニアはなかなかいません。
そこで、機械設計のレベルとして設備を丸ごと設計するようなスキルはなくても、簡単な改造や治工具レベルは設計できるスキルがあれば十分です。
PLCもいちから設備の制御設計ができるレベルがなくても、改善、改造によるカスタマイズができるレベルで十分です。
それだって、そう簡単にクリアできるようなスキルではありません。時間もかかるし、努力と実践を継続しないと無理です。
そうした取り組みを楽しめる人、遣り甲斐に感じることが出来る人が生産技術に向いています。
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