退職願

エンジニアに限りませんが、退職する時には出来るだけ円満退職が望ましいです。

なぜなら、あなたが思うほど世間は広くないからです。

どうせ辞めてしまう会社だからと、引継ぎをいい加減にしたり、人間関係で憂さ晴らしをするような辞め方はおすすめできません。

思わぬ場面で辞め方があなたの運命を変えてしまうかも分かりません。

 

私は20年間、モノづくりエンジニアの採用に関わってきました。

同時に退職届を何通も受け取りました。

そんな私の実際に体験したケースを紹介しながら、円満退職のススメをお話したいと思います。

 

最悪の退職男。再就職にまさかの展開!

辞めていくエンジニアの理由は人によって様々ですが、会社や上司に対する不満から辞めるケースも少なくありません。

 

例えば、

●給料が安い

●休みが少ない

●残業が多い

●仕事がきつい

●将来性がない

●上司や同僚との人間関係が悪い

などの理由です。

 

家庭の事情で止む無く退職するような人を除けば、たいていの人は不満を持って辞めていきます。

中には怒りを感じて辞めて行く人もいます。

 

仮にその理由に正当性があったとしても、毒づいて辞めるようなことはしない方がいいです。

引継ぎも可能な限り片付けてから辞めるべきです。

 

私が退職届を受け取った中で、最悪の男がいました。

私が面接して採用したエンジニアだったのですが、まったく見込み違いでした。

 

給料や仕事内容に不満があって退職に至ったのですが、その辞め方は本当にひどいものでした。

引継ぎもやらず、挨拶もなしに辞めていきました。それどころか、散々悪態ついて辞めて行ったのです。

 

彼がいたせいで、その部署の雰囲気はとても悪かったので、どんな辞め方にしろ私はせいせいした気分でいました。

 

そして、その男が辞めてから1ヶ月もしないある日、1本の電話が私にかかってきました。

それは日頃からとても懇意にしている、同業者の技術部門トップの部長からでした。

 

電話で話す

 

久しぶりに声を聞いたので、少し近況など世間話をした後、いきなり部長がこんな話を切り出しました。

 

「実は昨日、人事の方から中途採用のエンジニア推薦があってね。履歴書を見せてもらったら、おたくの社名があったもんでね。」

 

部長ご自身もすでにそのエンジニアとは面接も済ませ、採用を迷っているとのこと。どうも採否は五分五分のご様子でした。

そう、そのエンジアこそ散々悪態ついて辞めていったあの最悪男だったのです。

 

○と×

 

部長はその男の仕事ぶりや、出来れば辞めた理由を教えて欲しいと言うのです。

普通、こうした調査、確認に対しては

「個人情報保護の観点からお答えできません。」

と断るのが筋でしょう。せいぜい在籍確認を答える程度です。

また調査すること自体にどれほどの意味、信頼性があるのかも疑問でしょう。

 

しかし、そんなことが普通に聞けるほど、私と部長は懇意にしている仲だったのです。お互いに信頼し合っていればこそのお話でした。

 

私はどこまで話していいのか迷ったのですが、多少表現に気を遣いながらも、ありのままをお伝えしました。

 

部長は、

「ありがとうございました。後はこちらでよく検討して決めます。」

とお礼を言って電話を切りました。

 

数日後、

「不採用にしました」

と、また部長から電話がありました。理由は特に言われませんでした。

 

未経験者

 

私の回答がどれほど影響したかは不明です。

しかし、私が推薦しなかったのは事実であり、多少なりとも影響はあったはずです。

 

まさか彼も、散々悪態ついた相手の私がその後の再就職に影響を及ぼすとは、思ってもいなかったでしょう。

どうせ辞めて行く会社の上司、二度と会うこともない相手、言いたい放題言ってやれ、と思ったはずです。

 

しかし、実は彼が思うほど世間は広くなかったのです。

腹の中でどう思ったにせよ、やはり辞める時は可能な限り円満退職を目指すべきです。

無用な禍根はいつ自分の身に降りかかってくるかも分かりません。

 

世間は思ったより狭い。円満退職のすすめ

私の経験で、退職後の元社員と再就職先でばったり出会ったことは、一度や二度ではありません。

もう二度と会うこともないと思って退職しても、世間は思ったより狭いものです。

今回紹介した例はまさに世間は狭いと言う典型です。

 

あなたにどんな腹立たしい理由があっても、大きな不満を抱えた退職であっても、可能な限り円満退職をめざしてください。

どこでどう、辞める会社が将来関わってくるか分かりません。

もしかしたら、再就職先の会社の顧客になることだってあり得ます。

世間は思ったより狭いし、事実は小説より奇なりとも言います。

「まさか・・・」

と思うことが現実になるのが人生です。